【最新記事の目次】
第1章|時間がない…それ、錯覚です
「時間が足りません」──多くの店長が口にするこの言葉。
しかし本当に「時間がない」のでしょうか?
実は、“時間がない”のではなく、時間の使い方を間違えているだけかもしれません。
忙しい店長ほど、日々の火消し・急な対応・欠員フォローに追われます。
しかし、本当に優れた店長は、そんなときほど「使っている時間の質」を見直しているのです。
彼らが頭に入れているのが、時間管理マトリクスという考え方。
時間の使い方には「4つの領域」がある。
どの領域に時間を使っているかで、成果も成長も変わる。
次章では、このマトリクスを“現場目線”で解説します。
第2章|時間管理マトリクスとは?──現場向け超訳版
『7つの習慣』で有名な時間管理マトリクスは、以下の4つの領域から成り立ちます。
領域 | 分類 | 店長視点での定義 | 代表例 |
---|---|---|---|
第一領域 | 緊急・重要 | 火消し・トラブル対応 | クレーム、欠員対応、緊急事故対応(報告含む) |
第二領域 | 緊急でない・重要 | 未来への投資 | 育成、企画、改善、面談、勉強、必要な休息 |
第三領域 | 緊急・重要でない | 日常業務 | 接客、開店・閉店業務、来客対応など現場作業全般 |
第四領域 | 緊急でも重要でもない | 時間つぶし・惰性の行動 | スマホ、だらだら電話、必要以上の休息 |
この中で、店長が最も意識すべきなのが「第二領域」です。
なぜなら、ここに時間を使わなければ、第一領域(火消し)がどんどん増えていくからです。
第3章|第二領域こそ、店長が最も時間をかけるべき領域
「第二領域」は、目の前の数字には直結しないかもしれません。
しかし、未来の数字・信頼・人材・仕組みすべてを育てる“土台”です。
- スタッフとの面談や1on1
- 部下育成
- 稼働計画立案(シフトの前倒し作成)
- 業務の予測、予防
- 売場レイアウトの見直し
- マニュアル整備
- 業務効率改善
- 数値分析
- 近隣調査、競合調査
- 自ら学ぶ時間(読書・研修)
これらはすべて、「今やらなくても困らない」ように見えるかもしれません。
でも、やらなければ、いずれトラブル(問題)という形で第一領域に現れます。
第二領域を疎かにすると、
その問題は第一領域となって表面化する。
つまり、第二領域とは“未来の問題を未然に防ぐ活動”なのです。
そしてこの第二領域の最終目標は──
「店長の分身を、何人つくれるか?」
自分がいなくても売場が回る、自分がいなくてもクレーム対応ができる。
そんな“分身”を育てることこそ、第二領域の真のゴールです。
次章では、この「第二領域を怠ると第一領域に化ける」という原則をより具体的に見ていきます。
第4章|第二領域を怠ると、第一領域に化ける
第二領域の本質は「予測」と「予防」。
これを怠ると、必ず第一領域(火消し)としてツケが回ってきます。
第二領域を疎かにし第一領域になった事例──以下は第一領域です。
- 新人教育を後回しにした結果、重大なミスが発生
- 1on1をしてないことでスタッフの心の問題に気付けず鬱で長期離脱
- レジトラブル時の対応を当日のレジスタッフに説明しておらず、店長が呼ばれる
- 車両積み込み事故(後方スタッフが良かれと思っての行為)
- 店長出勤前に事故があった際の連絡方法を荷受けスタッフ全員に説明せず、荷受けリーダーが大怪我を負うが救急車呼ばず応急処置で待機
- お釣りの受け渡しミス、クレジットカード返却トラブルで店長が謝罪外出
- 従業員の怪我(カッター裂傷、重いものを足に落とし怪我)
これらは、すべて第二領域を“やらなかった”代償です。
つまり、第二領域とは「やらなくても今は困らないが、やらなければ将来困ること」。
この“時間差のある損失”を見抜けるかどうかが、優秀な店長かどうかの分かれ道です。
逆にいえば、第二領域に時間を使い続ければ、第一領域は減っていくのです。
第5章|第一領域も、教育の視点があれば“第二”になる
ここで重要な視点があります。
それは「第一領域の仕事も、教育の視点を入れれば第二領域になる」ということです。
たとえば──,
- お客様宅へのクレーム謝罪に行く ⇒ 新人役職者を同行させ、背中を見せる
- 重大トラブルの報告書を書く ⇒ 部下に一緒に考えさせる
- 釣銭受け渡しミス対応を部下に対応させる⇒同じミスが起きない仕組みを部下に考えさせ、プレゼンさせる
これはすべて、“ただの対処”で終わらせるのではなく、人を育てる機会にしているのです。
目の前の仕事を、誰かの学びに変えられるか?
それが、第二領域に変換する鍵です。
つまり、第二領域とは「行動の種類」ではなく、「視点」だと言えるでしょう。
トラブル対応に忙殺されているように見える店長でも、
そこに教育や仕組みづくりの視点があれば、その時間は「未来を変える時間」に変わります。
第6章|第二領域を50%にするための時間設計術
では実際に、店長が「第二領域に50%の時間を使う」にはどうしたら良いのか?
ここでは、週40時間労働の中で第二領域に20時間を割くことを目標に、現実的な時間設計の方法を紹介します。
時間配分のモデルケース
週40時間勤務の店長を想定した時間割例です。
活動 | 頻度 | 時間 | 週合計 |
---|---|---|---|
1on1(育成面談) | 週3回 | 30分 | 1.5時間 |
業務マニュアルの見直し・作成 | 週1回 | 60分 | 1時間 |
レイアウト・棚割り改善 | 週1回 | 90分 | 1.5時間 |
売上・客数などの数字分析 | 週2回 | 60分 | 2時間 |
自分の学び(本・セミナー・動画) | 毎日 | 20分 | 2時間以上 |
スタッフ観察・フィードバック | 毎日 | 30分 | 2.5時間 |
合計:約10時間〜15時間。残りはその週の重点テーマによって変動。
こうした時間を「先にブロックしておくこと」が最大のコツです。
第二領域を確保する3つの技術
- ①google カレンダーで「先にブロック」する
空いた時間にやるのではなく、「第二領域を先に確保」する発想へ。 - ② 行動記録で「自分の時間配分」を見える化
1週間だけでも、「今どの領域にいたか」を振り返ると驚きがあります。 - ③ チームと共有する
「この時間は第二領域の時間です」と言語化することで、協力も得やすくなります。
第7章|優秀なマネージャーは“時間の使い方”で決まる
成果を出している店長や、エリアマネージャーたちには共通する思考習慣があります。
それは──
「これは今、どの領域の時間か?」を常に意識していること。
第二領域を確保するために、第一領域とのバランスを見直し続ける。
それができている人ほど、現場も人も育ち、時間の余白が生まれています。
1. 優秀な店長の思考パターン
- 「売場づくり」に部下を巻き込む=第二領域
- 「トラブル対応」を任せるための準備を進める=第二領域
- 「業務の手直し」を“教育の場”として活用=第一領域→第二化
彼らは、ただ忙しいのではなく、「未来の忙しさを減らす」時間の使い方をしています。
2. 時間を“費やす”のではなく、“投資する”
時間をただ“使う”のではなく、「未来を変えるために投資する」という視点を持っているのが、優秀なマネージャーです。
逆に、常に第一領域に振り回されている店長は──
- 「時間がない」と言いながら、第三領域の雑用を自分でこなす
- 問題が起きてから対応する(=予防がない)
- 部下を信じきれず、任せられない
この差は、時間そのものの“質”をどう扱うかにかかっています。
3. 実話:7年前の受講者が、エリアマネージャーとして昨日研修で語ってくれた
昨日の店長研修に、1名のエリアマネージャーが特別参加してくれました。
実は彼は、7年前に私が担当した店長研修(次世代リーダー研修)の受講者です。
当時は若手の店長でしたが、時間管理マトリクスを学んだあの日から、日々の時間の使い方を意識的に変えていったと言います。
「時間がないと思っていたけど、それは“緊急なこと”にばかり反応していたからでした。
第二領域に時間を使うようになって、部下が育ち、自分の時間も増えて、結果的に成果もついてきました。」
彼はエリアマネージャーとして、現役店長たちにリアルな実践事例とともに、第二領域の大切さを熱く語ってくれました。
私はそれを聞きながら、あらためて実感しました。
「理論」は、使われてこそ“価値”になるのだと。
第8章|時間の使い方で“未来の姿”が変わる
あなたが今この瞬間、どの領域に時間を使っているか。
それは、1ヶ月後・1年後のあなたの“店”を決める選択です。
いつまでも火消しに追われ、走り続けるのか。
それとも、問題の芽を摘み、育て、任せられる組織をつくっていくのか。
その違いを生むのが、第二領域の時間です。
未来は、「いまどこに時間を使っているか」で決まる。
目の前の第一領域に追われるのではなく、
未来の第一領域を減らすために、第二領域へ投資せよ!
「育成している暇がない」ではなく、「育成しないから暇がなくなる」──
この視点を持てるかどうかが、リーダーとしての成長を左右します。
もう一度、自分に問いかけてみてください。
- この仕事は、誰でもできることか?
- これは、誰かに教えられることか?
- この時間は、未来のための時間か?
そして、「店長の分身を、あと1人つくるには何をすべきか?」
それを考えるところから、あなたの第二領域の実践は始まります。
第9章|“第二領域に生きる店長”が、未来を変える
第二領域に生きる店長は──
- 人を育て、
- 仕組みを整え、
- 信頼を積み重ね、
- 自らを解放していきます。
そしてその背中を見た部下がまた、次の“分身”へと育っていく。
店長の仕事とは、自分の時間を空けることではない。
“自分がいなくても回る未来”をつくること。
今この瞬間も、あなたの時間は流れ続けています。
その時間を「何に使うか」が、あなたの未来を決めます。
さあ、問いかけてみてください。
- 明日のスケジュールに、第二領域の行動は入っているか?
- 目の前の仕事は、未来をつくっているか?
- “あと1人の分身”を育てるために、今日なにができるか?
未来の自分に、「ありがとう」と言ってもらえるような時間の使い方を。
それが、第二領域を生きる店長の在り方です。
次回は、店長の時間を蝕む「第三領域」「第四領域」について掘り下げます。
あなたの時間の“無自覚な浪費”を見直すきっかけとして、ぜひ続けてご覧ください。