【最新記事の目次】
第1章|「店長が忙しい理由」は、第三・第四領域にある
「やらなきゃいけないことが多すぎて、育成の時間なんてとれない…」
そんな声を、現場の店長から何度も聞いてきました。
でも、本当に“やるべきこと”に時間を使えているでしょうか?
忙しさの正体をたどっていくと、その多くは、「第三領域」と「第四領域」にある時間です。
- 日報をまとめる
- 棚の前出しをする
- 備品の補充をする
- 近隣店長とのチャットが止まらない
- いつの間にかスマホをいじっていた
これらはすべて、「緊急ではあるが重要でない」=第三領域、もしくは「緊急でも重要でもない」=第四領域に分類されます。
どれも“今すぐ困ること”ではないが、気づくと時間を奪っていく。
それが、第三・第四領域の怖さです。
つまり、時間が足りないのではなく、「時間の質」が第三・第四に偏っていることが、店長が疲弊する根本原因の一つなのです。
次章では、このうち「第三領域=日常業務」について、店長がどう判断し、どう扱うべきかを掘り下げていきます。
第2章|第三領域=“日常業務”をどう扱うかが、店長の分かれ道
第三領域とは、「緊急だが、重要ではないこと」。
店長にとっては、日々のルーチンや雑用と呼ばれる業務の多くがここに該当します。
- 日報作成
- 棚の前出し・補充
- 検品や値札貼り
- レジ金チェック
- パソコンからの各種入力
これらは、「やれば終わる」「やらないと気持ち悪い」という種類の仕事。
確かに必要ですが、店長が全部やっていては育成の時間がなくなるのも事実です。
教えるなら、第三から“第二”になる
たとえば「検品」を自分でやるのではなく、部下に教えて任せると、それは“第二領域”になります。
仕組みとして回せるようにして初めて、店長の時間が空くのです。
店長の時間は、「やる時間」より「教える時間」に投資すべき。
それが未来の第一領域を減らす鍵。
託した後に見るべきは、“部下の第三領域”
任せて終わりではなく、次は部下が“第三領域にまみれていないか?”を観察することが大切です。
- 一日中、レジ横で作業していないか?
- 「やりやすい仕事」ばかりを選んでいないか?
- 考えなくても済む業務に逃げていないか?
このように、部下にも「第三領域の偏り」が起きないよう整えることが、店長の“導く力”です。
では、店長自身はどうか?
次章では「店長も第三領域をゼロにしてはいけない」という、もう一つの現実を見ていきましょう。
第3章|店長も、第三領域をゼロにしてはいけない
「育成のために時間を空けるなら、第三領域の仕事はすべて部下に任せればいい」
そう考えるのは一見合理的ですが、それは現場の信頼を失うリスクにもつながります。
現実には、店長も“手を動かす”必要があるのです。
第三領域=現場との接点
棚の前出しを一緒にやる。備品補充を率先してやる。
そんな何気ない行動が、「この人もちゃんと動くんだな」という安心感を生みます。
作業をやらない店長は、嫌われる。
「育成ばかりで何もしない人」だと見られてしまえば、信頼は得られません。
だからこそ、「選んで」第三領域に入る
重要なのは、全部の第三領域に入るのではなく、“意味のある第三”を選ぶという視点です。
- 新人と一緒に清掃し、チェックポイントを教える
- 棚を整理しながら、欠品の傾向を共有する
- POP貼りを通じて、「お客様の視線」を伝える
こうして作業に教育的意図を入れれば、それは第二領域にもなり得るのです。
店長も現場に入る。
でも、ただやるのではなく、目的をもって“入り方”を選ぶ。
それが、第三領域と上手に付き合うためのコツです。
次章では、もっと厄介な「第四領域」について、切り分けと考え方を見ていきましょう。
第4章|第四領域=“無意識の時間浪費”にどう向き合うか
第四領域とは、「緊急でもなく、重要でもないこと」。
つまり、“ただの時間つぶし”や“惰性の行動”です。
- なんとなくスマホをいじっている
- 目的のないネットサーフィン
- 必要以上の休憩
- 雑談チャットが延々と続く
- 連続2本目以降のタバコ
こうした行動は、一見すると「たいしたことない時間」ですが、積もると1日を丸ごと奪う力を持っています。
第四領域の怖さは、“気づかないうちに支配される”こと。
しかも、やっている本人は「頑張ってるつもり」になっていることが多いのです。
必要な雑談・休息は、第二領域である
勘違いしてはいけないのは、すべての雑談や休憩が無駄ではないということです。
部下との雑談から信頼が深まったり、休憩がリフレッシュになったりするなら、それは第二領域の活動です。
問題は、必要以上に時間を奪われていないか。
- 「最近どう?」というだけの電話やチャットが30分続く
- 座って5分のつもりが、気づけば20分休んでいる
この「必要と過剰の境目」を見抜くのが、店長としての判断力です。
第5章|第四領域をゼロにしない、でも支配させない
第四領域は「重要でも緊急でもない」行動。
つまり、“成果にも人間関係にもつながらない時間”です。
だからといって、「全部やめよう」とするのは、かえって逆効果になることもあります。
人は、“ムダ”をゼロにすると、窮屈になりすぎて続かなくなる。
第四領域は、あってもいい。だが、支配させてはいけない
必要以上の動画視聴や無目的なSNSは、エネルギーを消耗させるだけ。
一方で、「意図してちょっとスマホを見て気を抜く」くらいは、回復につながることもあります。
重要なのは、“時間の使い方を自分で選べているかどうか”。
支配されているか、使っているか。
その違いが「店長としての成熟度」を決めると言っても過言ではありません。
振り返れる自分を持つことが鍵
「あれ?今の時間、なんだったんだろう?」
こうした“あとから気づける力”が、第四領域をコントロールするための第一歩です。
- 雑談が長引いたとき、次に短くする工夫を考える
- スマホを無意識に触ったとき、「なんで今?」と問い直す
- 夜に一日を振り返り、「どの領域が多かったか」を確認する
振り返れる人は、時間の支配者。
振り返らない人は、時間の奴隷。
次章では、こうした領域の考え方を、店長だけでなく“チーム全体”にどう活かすかを整理していきます。
第6章|チーム全体の“時間配分”をデザインせよ
時間管理マトリクスは、店長自身が意識するだけでなく、チーム全体の時間配分設計に活かしてこそ意味があります。
なぜなら、店長だけが第二領域に集中しても、部下が第三・第四領域に偏っていれば、店全体の成果は上がらないからです。
理想の配分イメージ
役割 | 第一領域 | 第二領域 | 第三領域 | 第四領域 |
---|---|---|---|---|
店長 | 20% | 50% | 25% | 5% |
部下 | 15% | 10% | 70% | 5% |
店長には第二領域を積極的に取りに行く役割があり、部下には“第三領域を通じて力をつける”時期が必要です。
ただし、部下にも最低限10%は「考える時間」=第二領域を与えたいところ。
部下にも第二領域が「0%」だと、考えない人材が育ってしまう。
逆に50%を超えると、現場が回らない。
見極める目、配分する意志
店長の役割は、「誰が、どの領域に時間を使っているか」を見極め、全体が機能するよう時間を“配分すること”です。
・時間がある人に、考える仕事を渡す
・時間に追われている人に、第三領域のタスクを引き取る
・全員で週1回だけ“第二領域の会話”をする
こうした意識と仕掛けが、店全体の“時間の質”を上げていくのです。
次章では、「時間の中身を見抜ける力」がどれほど育成に影響を与えるかを深掘りしていきます。
第7章|“働いている時間の中身”を見抜ける店長が、人を育てる
「あいつは一生懸命働いてる」
そう見えても、実際には第三領域ばかりに時間を使っていることもあります。
また、逆に「なんか余裕そうにしてるな」というスタッフが、第二領域に取り組み始めていたというケースもある。
だからこそ店長には、“どれだけ動いているか”ではなく、“どの領域で動いているか”を見抜く力が求められます。
量ではなく「質」を見る
たくさん作業している=良い、ではありません。
誰かに指示されたまま動く第三領域だけでは、本人も店も成長しない。
そこに「考える時間(第二領域)」があるかどうか。
- 今日の売場の変化を自分なりに言葉にしているか
- ミスの原因を自ら分析しているか
- 人に教える時間をもっているか
このような“行動の中身”を見る力こそ、店長の育成力です。
問いをもてるチームに変わる
「その時間って、どの領域?」
「それ、託せるようにした方がいいかもね」
こんな言葉がチーム内で自然に出てくるようになれば、現場の時間の質は一気に変わります。
時間の質を問い直すことは、チーム文化を変えること。
それができる店長が、“未来の人材”を育てていきます。
まとめ|時間の“質”を見抜ける人が、未来を動かす
第三領域(=日常業務)は、店舗運営にとって必要な仕事です。
しかしそれを「教えて託す」ことで第二領域に変えられるのは、リーダーにしかできない仕事です。
第四領域(=時間の浪費)は、ゼロにしなくていい。
でも支配されないよう、“自分で選んで使う”姿勢が必要です。
①忙しさの中に埋もれない。
②今どの領域にいるかを見極め、意味のある時間を生きる。
その判断力が、店長の価値を決めていきます。
森友ゆうき
あなたが今この瞬間、どの領域に時間を使っているか。
いつまでも火消しに追われ、走り続けるのか。
それとも、問題の芽を摘み、育て、任せられる組織をつくっていくのか。