【最新記事の目次】
こんにちは!森友ゆうきです。
福岡・北九州発の「資さんうどん(すけさんうどん)」をご存じでしょうか?
いまや関東にも進出し、着実にファンを増やしている注目の飲食チェーンですが、わずか数年前まで“地方ローカルの名店”にすぎませんでした。
そんな資さんが、なぜ150億円企業にまで成長できたのか。そのカギは、「仕組み経営」への転換と、現場視点を活かした進化にあります。
そして何を隠そう、私も九州勤務時代によく通っていた資さんファンの一人。
今回は、資さんうどんの成長ストーリーから、チェーンストアの店舗運営・マネジメントの本質を読み解いていきます。
1. かつては「前近代的」だった店舗体制
1976年に創業した資さんうどん。福岡・北九州では絶大な人気を誇っていましたが、2010年代半ばまでは店舗運営体制がかなり属人的でした。
- 店舗マニュアルが未整備
- 売上金の回収をトラック運転手が“ついでに”行う
- 店舗ごとのやり方にばらつきがあり、教育もOJT頼り
こうした「昭和型の現場運営」は、地域に根付いた温かさと引き換えに、成長や拡大を妨げるボトルネックにもなります。
創業者が高齢となり、事業承継が課題になった頃、2018年に独立系ファンドのユニゾン・キャピタルが経営に参画。ここから変革が始まります。
2. 標準化と外部委託で「仕組み化」へ
ユニゾンがまず着手したのは、オペレーションの標準化でした。
それまで“ベテランの勘”や“店舗ごとの慣習”に頼っていた業務に、マニュアルを導入し、誰でも再現できる運営体制を築きました。
標準化とは?
業務手順や品質を統一し、教育効率の向上・サービスの安定・利益率の向上などを図る取り組み。
店舗数が増えるほど、この仕組みの有無が成長スピードを左右します。
また、調理工程の一部(食材加工など)を外部委託し、工場への投資も実施。こうして、安定した品質と省力化を同時に実現しました。
ただし、出汁や名物「ぼた餅」など、資さんらしさを決める部分は職人の手仕事を残すという“守り”も徹底。仕組みと伝統のバランスを取った点が、非常に秀逸です。
3. 外部のプロ経営陣を招き、組織再編を推進
ユニゾンは「人の力」にも投資しました。飲食業界で豊富な実績を持つ経営者を招聘し、組織を根本から見直します。
- 社長に就任:元「三田製麺所」社長・佐藤崇史氏
- 社外取締役:元「スシロー」社長・豊崎賢一氏
彼らは「ファンド傘下で企業を成長させる」経験を持つプロ経営者です。
トップダウンではなく、現場との対話を通じて理念を再定義し、店舗展開・人材育成・組織風土を一新していきました。
この章で伝えたいのは、「店舗の成長には、現場の努力だけでなく、組織全体の設計力が欠かせない」ということ。
強い経営陣による「本部の進化」は、現場を支える基盤になるのです。
4. 投資と拡大戦略で150億円企業へ
標準化と組織整備に加えて、ユニゾンは戦略的な設備投資も実行しました。
- 約5億円をかけた食材加工工場への投資
- POSや本部システムの刷新(DX化)
- 商品開発・物流体制の強化
その成果として、
- 2017年:42店舗/売上71億円
- 2024年:70店舗超/売上153億円(見込み)
と、売上・店舗数ともに倍増。地方チェーンとしては異例の成長です。
5. 関東進出も実現──すかいらーくとの連携
2024年10月、資さんはすかいらーくホールディングスに全株式を譲渡され、完全子会社となります。取得額は約240億円。
その直後から、関東出店が加速。
- 千葉・八千代店(2024年12月)
- 東京・両国店(2025年2月)
- 埼玉・草加店(2025年春)
全国展開に向けた基盤整備と同時に、創業の味や理念を守る姿勢も一貫しています。
思い出の味──私のおすすめは「肉ごぼう天うどん」
実際の画像:「肉ごぼう天」を頼もうとした時、「もつ鍋うどん」と言ってました。これもうまい(笑)
実は私自身、7年前に九州でエリアマネージャーをしていた頃、資さんうどん(あと”牧のうどん”)によく通っていました。
肉ごぼう天うどん──甘辛い牛肉とサクサクのごぼう天がたまらない一杯で、忙しい現場業務の合間に“ほっとする”味でした。
そして先日、家族と一緒に埼玉・草加店へ。
日曜の19時に行ったため、店内は大混雑…。1時間半近く待ちました。
久しぶりの資さん。正直「味、変わってないかな…」という不安もありましたが、あの頃とまったく変わらぬ出汁の香り、旨み、安心感に、心がじんわりと温まりました。
資さんが、思い出の味を守りながら、地域を越えて人々に届いている。まさに“進化と継承”の理想形だと感じました。
6. 店長が学ぶべき3つの教訓
資さんうどんの成長は、私たちの店舗運営にも活かせるヒントで満ちています。
- 標準化は拡大の土台
人によってやり方が違う現場では、成長は再現できません。 - 外部の知見に学ぶ姿勢
一人で背負い込まず、他社や専門家の視点を取り入れることが飛躍のきっかけになります。 - 「味」よりも「仕組み」がブランドをつくる
変えない部分(味・理念)と、変えるべき部分(運営・仕組み)を見極める力が問われます。
まとめ|「味を守る」ことは、チェーン化の中で最も難しい
チェーン展開を進める中で最も難しいのは、“味”を守ることです。
仕組みを整え、標準化を進めれば進めるほど、料理や接客が“無機質”になりがちです。
資さんはそこに真剣に向き合い、「出汁」や「ぼた餅」といった核となる味の部分は職人の手に残しながら、物流や加工、教育といった「変えるべき領域」を着実に進化させてきました。
この“守る”と“進める”の見極めこそ、チェーン店経営の本質。
創業の精神を守りながら、仕組みで未来を創る。
資さんうどんの歩みは、地方チェーンにも全国ブランドになる可能性があることを証明してくれました。
そして私たちの店舗運営にも、「自分たちらしさを残しながら、どこまで仕組みを整えられるか?」という問いを投げかけています。
あなたの店舗にも、必ず進化の芽があります。
変えていいもの、変えてはいけないもの。その選択が、未来をつくります。
今後の”資さんうどん”の成長に目が離せません。
関連記事: