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魔法は細部に宿る|「ハリーポッターとしまえん」異業種から学ぶ、店づくりの視点

投稿日:2025年5月25日 更新日:

魔法は細部に宿る|ハリーポッターとしまえん」異業種から学ぶ、店づくりの視点

こんにちは!森友ゆうきです。

2023年、としまえん跡地に誕生した「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京」。

私はファンとしてではなく、「この施設は何を意図して設計しているのか」「どこに“現場づくり”の本質があるのか」を確認しに、家族で現地へ足を運びました。

結果、そこには“異業種だからこそ気づける学び”が確かに存在していました。

この記事では、スタジオツアー東京を通じて見えてきた、店舗設計に活かせる7つの視点をお伝えします。


第1章:施設概要|ワーナー ブラザース スタジオツアー東京

ホグワーツ城の展示

2023年6月16日、東京都練馬区のとしまえん跡地に「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 – メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が開業しました。

  • 所在地:東京都練馬区春日町1-1-7
  • 運営会社:ワーナー ブラザース スタジオ ジャパン合同会社
  • 施設面積:約30,000平方メートル(屋内型施設としては世界最大級)
  • コンセプト:映画『ハリー・ポッター』および『ファンタスティック・ビースト』シリーズの制作舞台裏を体験できるウォークスルー型エンターテイメント施設
  • 主な展示内容:ホグワーツの大広間、ダイアゴン横丁、9と3/4番線、魔法省、禁じられた森などのセットや衣装、小道具の展示
  • チケット料金:大人7,300円、小人4,600円(税込)

この施設は、映画制作の裏側を体験できることを目的としており、アトラクションではなく、展示を中心とした設計が特徴です。映画の世界観を忠実に再現し、訪れる人々に深い没入体験を提供しています。


第2章:世界観で勝負する勇気

空飛ぶフォード・アングリア(森に墜落したシーン)

スタジオツアー東京には、ジェットコースターやライド型のアトラクションは一切ありません。

あるのは、映画のセット・衣装・小道具など、撮影現場を忠実に再現した“展示”だけ。

テーマパークと聞いて想像される派手な乗り物や仕掛けは排除され、静的な空間だけで「体験価値」を成立させようとする設計になっています。

そして、入場料は大人7,300円/小人4,600円(税込)という強気の価格設定。

私はここに、世界観そのものに圧倒的な自信を持っていることを読み取りました。

照明、音響、導線、解説文──

そのすべてが、「来場者に一瞬たりとも“現実”を意識させないように」設計されています。

魔法の世界に“足を踏み入れた”と感じさせるための一貫性。それこそが、この施設の最大のテーマです。


第3章:空間と情報を一体で設計する“演出力”

スタジオツアーを観察して最も感心したのは、展示の配置や照明、導線、説明文の構成に至るまで、空間と情報が完全に連動していた点です。

展示は「ただ並べる」のではなく、「どう見せるか」「どんな順で触れてほしいか」が設計されており、進むほどに理解と没入が深まる構成になっていました。

説明文にも明確な意図があり、「この小道具は1秒しか映らないが、物語の裏設定を支えている」といったように、見る人に“深く知る喜び”を感じさせる設計がなされています。

空間、展示、言葉──それぞれがバラバラに機能するのではなく、ひとつの“魔法世界”を成立させるために結束している

伝える順番・空気・意図をすべて計算に入れた設計。これは展示施設というより、「脚本のある空間演出」だと感じました。

裏方の努力に光を当てるマネジメント

展示の中で最も印象に残ったのが、「魔法は細部に宿る」という展示パネルの言葉でした。

魔法は細部に宿る

──大型で精巧な魔法省のセットを一人でつくるとしたら、不眠不休でがんばっても20年以上はかかるでしょう。
セットの細かい部分はカメラに映らないかもしれないし、たとえ映ったとしても観客の目にとまらないかもしれません。
それでもセットの隅々まで念入りにつくり込んでこそ、作品の世界に説得力が生まれ、出演者やスタッフが実力を発揮できるのです。

──スタジオツアー東京 展示より

この一文には、ものづくりの本質が凝縮されています。

来場者の目に触れるかどうかではなく、「物語に説得力をもたせるかどうか」を基準に設計する。

その思想は、展示だけでなく、全体の演出・空間構成・説明文の構造にまで及んでいました。

細部にこそ、信頼と没入の核がある。

私はこの展示に、ものづくり・現場づくりにおける“本質のマネジメント”を見ました。

深く知る喜びが、ファンを本物に変える

展示物の多くに、制作時のエピソードや意図が丁寧に添えられていました。

「なぜこの形なのか」「どうしてこの色なのか」──

それらの情報が、作品に対する“理解の深さ”を支えていました。

単に見るだけではなく、「知ること」そのものが体験価値になる。

ファンを“通過者”にせず、“共感者”に変える設計思想を感じました。

この「こだわりを伝える設計」は、実は店舗でも応用されています。

たとえばIKEAでは、家具の横に「この角度の脚は安定性を高めるため」「この布地は自然光が映えるよう設計」など、製作者の意図をそのまま顧客に届ける仕掛けが随所にあります。

「作り手の思い」を知ったとき、人は“買う”から“共感して選ぶ”に変わる。

スタジオツアー東京が行っていたのは、まさにその共感設計だったのです。

“わたしが魔法使いになる場所”という設計

スタジオ内には、多くの来場者がローブをまとい、杖を手にして歩いている姿がありました。

「見る人」ではなく、「参加する人」として空間に入っていく構造。

この設計が、圧倒的な没入感を生んでいると感じました。

写真を撮る、ポーズを決める、再現された場面に入り込む──

“私は今、この世界の住人だ”と来場者自身が思えるような体験設計になっています。

これは、単なる撮影スポットではありません。

「受け身」から「当事者」へと意識を転換させる導線が、施設の随所にちりばめられているのです。

観る体験から、演じる体験へ。

この“主役化”こそが、記憶に残る空間を生み出していました。

仲間と共有することで熱量が生まれる

スタジオ内では、コスプレ姿のグループが、笑顔で写真を撮り合いながら歩いていました。

ローブを翻し、杖を振りながら「魔法省で撮ろう」「組み分け帽子の前で決めよう」――。

驚いたのは、それが子どもたちではなく、”大人たち”が本気でなりきっていた”ということです。

一瞬の照れもなく、自分自身がこの世界の一員であるように振る舞う。

そして、それを一緒に楽しんでくれる仲間がいる

この「共有された没入感」こそが、施設全体に熱量を生んでいるのだと感じました。

共通言語と共体験。

それがあるだけで、人は場所に愛着を持ち、物語の一部になれるのです。

笑い合える、分かち合える、それぞれの“魔法の時間”。

スタジオツアー東京は、そんな瞬間を生む舞台として、丁寧につくりこまれていました。

まとめ:「これはただの展示施設ではない」と確信した理由

スタジオツアー東京は、単に映画の舞台裏を紹介する場所ではありませんでした。

展示物、導線、解説文、空間の光と音、そして来場者自身の“なりきり体験”に至るまで、

すべてが「世界観を壊さないための設計」として統一されていたのです。

その設計力は、「見る体験」ではなく「世界の一部になる体験」へと、来場者を導いていました。

誰かに説明されなくても、細部を見れば“伝わってくる”。

こだわりや信念が、空気や構造に染み込んでいる。

「歴史上の偉大な人物も
最初はみな僕らと同じ学生だったんだ。
彼らにできたなら、僕らにもできる」

— ハリー・ポッター

終盤近くで、スタッフの女性からもらったカードです。

この言葉が象徴するように、世界を動かす力は、特別な誰かのものではなく、

“細部に心を込め続ける人”に宿るのだと感じました。

空間を設計すること。人の体験を設計すること。

誰かに出来ることなら、僕らにもできる。

それは、業種を超えて共通する「現場づくりの本質」です。

魔法は、たしかにそこにありました。


森友ゆうき

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