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その場を盛り上げる教育 vs. 後で効いてくる教育
研修で育つのはどっち?
こんにちは、森友です。
今回は、企業講師視点の話です。
研修を終えたあと、アンケート結果に一喜一憂したことはありませんか?
その場では盛り上がったのに、
「刺さらなかった」「物足りなかった」
そんな声を見ると、正直へこむこともありますよね。
でも本当に、それって“ダメな研修”なのでしょうか?
講師評価は、終了時のアンケートでの理解度や満足度で測られることが多いでしょう。
残念ながら、それ以外の評価をつけるのが困難な業界でもあります。
その為、受講後満足度が高ければ嬉しいのですが、講師として「そこ」を目指すことは本当に正しいことなのでしょうか。
「その場を盛り上げる教育」と「あとで効いてくる教育」
あなたなら、どちらを選びますか?
第1章|盛り上がったけど、実は何も残らなかった──そんな経験はないですか?
現場研修でも集合研修でも、「盛り上がった=成功」という空気があります。
確かに、反応が良いと講師側も手応えを感じますし、アンケート結果にも安心します。
でもその一方で、こんな疑問も浮かびませんか?
- 盛り上がった割に、現場で行動が変わっていない
- ワークは楽しかったけど、思い出せることがない
つまり、その場の“熱量”はあっても、“残るもの”が少ないということ。
では逆に、その場では静かだったけれど、数週間後に行動が変わる研修があったとしたら?
本当に価値があるのは、どちらでしょうか。
第2章|“その場の満足”を追いかけると、教育は浅くなる
講師として、つい「満足してもらいたい」「ウケたい」と思ってしまうことがあります。
場が盛り上がれば、評価も高まりやすい。
現場に帰ってからも「いい研修だった」と言ってもらえるかもしれない。
でも──
“わかりやすい”だけの研修は、時として“考えなくてもいい”研修になることもあります。
教育の目的が「その場で気持ちよくなること」になってしまえば、
受講者は本気で自分と向き合う必要がなくなるからです。
その結果、“知っている”けど“使えない”という学びになってしまう。
教育が「答え合わせ」になった瞬間、学びは止まります。
第3章|教育とは、“未来で選ばれる選択肢”を渡すこと
私はこう考えています。
教育とは、
“その場の正解”を与えることではなく、
“未来で選ばれる選択肢”を増やすこと。
その場で完璧に理解させるよりも、
「あの時、ああ言われたな」と後から思い出される言葉を残すことのほうが大切。
それはすぐに行動にはつながらないかもしれません。
でも、ふとしたときに選択の軸となる。
私は「”教育”とは、“あとで効く種”をまく営みだ」とも思うのです。
第4章|7年ぶりの再会が教えてくれたこと
実際、私の研修では「数年経っても内容を覚えている」と言われることが多くあります。
先日、ある元受講者と7年ぶりに再会しました。
彼はかつて、次世代リーダー研修に参加していた一人。
その時もとても真剣に受講してくれていたのですが、アンケートの評価は「10段階中8」。
8なので、受講者としては合格点を出していたはずなのですが・・
当時の私はその研修に確信を持って取り組んでいたため、初めて満点ではない評価をもらったことが残念で記憶に強く残っていたのです。
7年ぶりに再会した彼は、すでにベテラン店長になっていました。
そして今回、再び私の研修を2日間受けてくれたのです。
休憩時間に少し当時の話をしてみたところ、彼はこう言いました。
「実は僕、今は社内講師を目指していて、今回は“伝える側”の視点で見ていました。
森友さんの研修は、構成も言葉も、全部が勉強になります」
また、「受講した時の記憶は今も鮮明に残ってますし、実際に使ってるスキルが多くあります‥」と言うんです。
私は、当時の彼には響かなかったと思い込んでいましたが、そうではないと。
そして彼は、今回満点のアンケートを書いて帰っていきました。
教育は、“その場の評価”では測れない。
時間を超えて、必要なときに効いてくる。
そのことを、あらためて私自身が教えてもらいました。
第5章|まとめ:盛り上がりよりも、“余韻”を残せているか?
良い教育とは、必ずしも「その場で気持ちいいもの」とは限りません。
本当に価値ある問いかけやメッセージは、
「ちょっと痛い」「耳が痛い」「正直つらい」と感じることもあるでしょう。
でも、そういう違和感こそが、人を変えるきっかけになるのです。
研修、教育とは、「拍手される場」ではなく、
“静かな強い余韻”が残る場である。
すぐに変化が見えなくても、
”あとで何度も思い出すような一言”を届ける。
それが、教育者としての本当の価値だと私は信じています。
そう思えずに、一喜一憂してしまうと以前の私のようにムダに思い違いをしてしまうかも知れませんよ。