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【チェーンストア理論シリーズ⑨】価格設計の3原則|プライスライン・レンジ・ポイントの使い方
こんにちは!森友です。
「ある商品が249円、279円、299円…1990円~3990円と複数の価格が小刻みに設定されてる」
同じ種類の商品なのに、この微妙な売価の違いはなんなんだろう・・迷うし、わかりにくいから結局買わずに帰る・・
これはチェーンストア理論とは違う価格設定です。
本来、チェーンストア理論においては価格設計には明確な“型”があるのです。”全国展開のチェーン”でもこの原則が守られていない企業はたくさん見かけます。本日は、その基本的な型を学び、身近な例でチェーンストアの価格戦略について考えていきましょう。
以下3つが揃ってこそ、売場に戦略が宿ります。
- 価格の階層をつくる「プライスライン」
- 価格の幅を整える「プライスレンジ」
- 主力価格を定める「プラスポイント」
今回はこの“価格の設計図”を、ユニクロ・ニトリ・無印良品の事例とともに読み解いていきます。
第1章|プライスライン ― 価格の“階段”をつくる
プライスラインとは、価格の“ステップ”をあらかじめ設計することです。
たとえば…
- 500円、1,000円、1,500円
- 990円、1,990円、2,990円
- 3,000円、5,000円、10,000円
こうして価格に段差をもたせることで、価格感覚のブレをなくします。
■ユニクロの例
- Tシャツ:990円/1,500円/1,990円
- アウター:4,990円/7,990円/9,990円
→ 客層の選別・買いやすさ・売価アップが自然に成立しています。
第2章|プライスレンジ ― 売場の価格“幅”を整える
プライスレンジとは、同じ売場内に並ぶ商品群の価格幅です。
チェーンストア理論では、価格差は最大3倍までに抑えるべきという原則があります。
例:1,000円の商品があるなら、同じ棚の中で最大でも3,000円まで。
■なぜ3倍まで?
- 価格感覚に混乱が生まれる
- 「この店は高いの?安いの?」とお客様が迷う
■ニトリの例
- ダイニングチェア:3,000円/5,000円/9,000円
→ 高価格帯は別ゾーンに展開し、レンジの整理と納得感を両立しています。
第2章補足|機能が違えば別の商品群として3倍までOK
ただし、機能や仕様が明確に異なる商品群であれば、新たな価格帯で更に3倍まで価格差を広げてもOKとされています。
■ニトリのソファの例
- ベーシックモデル(布・合皮):29,800円~89900円
- 本革・総皮・電動タイプ:99,000円~289000円
→ 仕様・素材が異なれば、価格の階層を変えることでお客様の納得を得られます。
素材の違いで仕入れ価格は大きく異なります。3人掛けソファを89900円までに抑えるなら、本革のソファは取り扱えないことになりますよね・・売場が布ソファと合成皮革ソファのみになるはずです。本革ソファ買いたい場合は、他のお店に行くことになり不便です。素材、機能が違えば新たな価格帯のなかで3倍以内に収めているのです。
気になる方は公式ホームページで確認してみてください。
第3章|プラスポイント ― 主力価格を“見える化”する
プラスポイントとは、売場に最も多く陳列されている価格帯のことです。
価格の中心=売場の“顔”として、価格の印象を決定づけます。
■例:
- 790円 × 10個
- 1,490円 × 20個
- 1,990円 × 8個
→ この場合、プラスポイントは1,490円です。
■ドン・キホーテの例
- 298円・498円・999円など、「止まる価格」で構成
→ 商品数を特定価格に集中させ、売場全体の「価格印象」をデザインしています。
第4章|講師として見た「価格設計がうまい店・うまくいかない店」
現場で感じるのは、価格設計の有無が売場の説得力を大きく左右するということ。
- プラスポイントが不明確
- 価格差が広すぎて混乱を招く
- 一番売りたい価格に商品が並んでいない
価格=伝えたい価値
伝え方に“型”がなければ、お客様は迷い、買いにくくなります。
高価格商品を“単発で置く”くらいなら、思い切って外すのも選択肢
価格設計の目的は、売場を“格好良く”見せることではなく、お客様が買いやすい環境をつくることです。
もしも単発で高額商品が並んでいるだけなら、それは売場の印象を崩している可能性があります。
意味のあるラインが作れないなら、思い切って撤去するのも、チェーン運営では立派な判断です。
まとめ|価格設計は“売場の言語”
価格は、ただの数字ではありません。
「この商品には、この価値があります」という、売場からお客様へのメッセージです。
プライスラインで階層を整え、
プライスレンジで安心感をつくり、
プラスポイントで主力価格を明確にする。
こうした設計がある売場には、“価格に説得力”があります。
実際の売場を見てみてください
ユニクロ、ニトリ、無印良品…
日本で成功しているチェーンストアを見て、価格の違いを感じてみましょう。
- プラスポイントはいくら?
- プライスレンジは何倍?
- 価格ラインは整っている?
そこには、売場の意図=価格の設計図が、きっと見えてくるはずです。
最後に、チェーンストア理論をさらに深く学びたい方に、
桜井多恵子さんの著書『チェーンストアの教科書』は、
チェーンストアとは何か、なぜ標準化が必要なのか──
現場で働く人にも、組織をつくる人にも伝わる、
このブログで紹介した内容とあわせて読むと、チェーン運営の「