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店舗運営で「うちはうち」が崩壊を招く理由と標準化の本質を学ぶ
はじめに|「うちはうち」は本当に通用するのか?
こんにちは、森友です。
店長時代、そして講師として現場を見てきた中で、何度も聞いたこのフレーズがあります。
「うちはうちのやり方があるから。」
この言葉は一見、店舗ごとの工夫や自負にも聞こえます。
でも、チェーンストアという組織において、この「個店主義」は大きな落とし穴になることがあります。
本部と現場がかみ合わない。
マニュアルが形骸化する。
いつの間にか、現場の“ローカルルール”が組織の原則を上書きしていく。
今回は、そんな“現場のリアル”に切り込みます。
第1章|「うちはうちのやり方がある」の3つの正体
現場でこの言葉が出る背景には、以下のような心理があります。
1. 「本部のルールが現実に合っていない」
→ 仕組みに対して現場が“無力感”や“違和感”を感じている状態。
2. 「自分たちの工夫に自信がある」
→ 過去の成功体験があるため、変えることに抵抗を感じている。
3. 「言われた通りにやっても成果が出ない」
→ 本部からの指示が“手段”になっており、“目的”が伝わっていない。
つまり、「うちはうち」は、反発ではなく納得の欠如なんです。
第2章|個店主義がもたらす“組織の崩壊パターン”
この「うちはうち」が各店舗に蔓延すると、チェーンはどうなるのか?
- 店舗ごとに売価やVMDがバラバラになる
- 接客クオリティに差が出て、顧客体験が統一されない
- 教育・育成が属人化して、引き継ぎができない
- 「A店ではOKなのにB店ではダメ」という混乱が起きる
本部が築こうとしている「一貫したブランド体験」が崩れ、組織としての信頼が揺らいでいきます。
お客様視点で見る“個店主義”の怖さ
「うちはうちのやり方がある」という現場の姿勢は、内側から見ると合理的に思えるかもしれません。
でも、お客様はどうでしょうか?
- いつも行く店舗と、品揃えが違う
- 同じメニューなのに味が違う
- 店員の対応が店舗によってまちまち
これは、“チェーンブランド”としての信頼を損なう重大なリスクです。
特に飲食や小売において、「いつでも・どこでも・同じ体験ができること」が最大の価値。
現場の工夫は尊重すべきですが、それが“統一された品質”を壊す方向であってはなりません。
第3章|なぜ本部と現場がかみ合わないのか?
原因は大きく2つあります。
1. 「現場の現実」が施策に反映されていない
- 理論は正しい。でも使いづらい。
- 決定者が現場から遠ざかっていることで、乖離が生まれる。
2. 「説明不足」で“目的”が伝わっていない
- 本部は「どうやるか(How)」しか伝えていない
- 現場は「なぜやるのか(Why)」がわからないため、納得できない
→ この溝を埋めない限り、仕組みは「上からの押し付け」に見えてしまいます。
第4章|講師として見た、“個店主義”に潜む善意と危険
私はこれまで、個店主義に「現場の愛」を感じることもありました。
- 自分の店舗を良くしたい
- メンバーに合ったやり方を模索している
- 地域や客層に合わせて工夫している
でも、どんなに善意であっても――
「そのやり方が、次の世代に引き継げるか?」
そう問われたときに、答えが曖昧ならば、仕組みとしては未完成です。
まとめ|「現場を信じる」と「現場に委ねる」は違う
チェーンストア理論における「標準化」は、現場を縛るものではありません。
- 再現性
- 引き継ぎやすさ
- 教えやすさ
- お客様への一貫した価値提供
これらを担保するための“信頼の設計”です。
「うちはうちのやり方がある」――その言葉を否定する必要はありません。
でも、それが組織の成果を阻んでいるなら、“仕組みで進化させる”時が来ているのかもしれません。
最後に、チェーンストア理論をさらに深く学びたい方に、
桜井多恵子さんの著書『チェーンストアの教科書』は、
チェーンストアとは何か、なぜ標準化が必要なのか──
現場で働く人にも、組織をつくる人にも伝わる、
このブログで紹介した内容とあわせて読むと、チェーン運営の「