店長小説

【連載小説・店長物語#03】川原さんの一言|店長は“現場に入ること”から始まる

投稿日:2025年6月12日 更新日:

【連載小説・店長物語#03】川原さんの一言|店長は“現場に入ること”から始まる

※本記事は、小説形式で描くフィクションコンテンツです。
登場人物や展開は創作ですが、現実の店舗運営に通じる"店長のリアル"を描いています。

こんにちは!森友ゆうきです。

「店長は、偉くなることじゃなくて、現場に入ることから始まる」
今回は、そんな“行動の原点”が描かれる第3話です。


第三話:川原さんの一言——店長は“現場に入ること”から始まる

出勤して30分後、すでに売場は乱れていた。
商品が箱のまま通路に置かれ、棚には空きが目立つ。

昨日の夜勤で入荷された在庫が、まったく補充されていない。

どうしたらいい?
蓮はバックヤードに立ち尽くしていた。

人手が足りない。
誰かに指示すべきか、自分がやるべきか——でも、やったことがない。

そのとき。

「店長さん、一緒にやってみませんか?」

声をかけてきたのは、川原さんだった。
いつもの落ち着いた口調。押しつけがましくない、それでいて確かな誘導。

「あ、はい……!」

気づけば、蓮は軍手をはめていた。


段ボールを開け、棚に並べる。
覚えることは多い。POPの位置、商品ローテーション、売れ筋と死に筋——。

でも、黙々と手を動かす時間は、不思議と気持ちが落ち着く。

「あの、そこは“冷”って書いてある方が回転早いですよ」

川原さんが、静かにフォローを入れてくれる。
頭の中にあった“店長らしさ”とは全然違う。
けれど、“誰かと一緒にやる”という感覚は、なんだか懐かしかった。


そのとき。

「……あ、ありがとうございます」

小さな声がした。

振り返ると、若い女性スタッフが頭を下げていた。
名前は、サキ。大学生のアルバイトで、最近入りたてだ。

蓮が先に棚を整えていたおかげで、サキの作業が少しだけ楽になったらしい。

「あ、いえ……。こちらこそありがとう」

そう返した瞬間、蓮は胸の奥で何かが動いたのを感じた。

誰かと、ちゃんと目が合った気がした。


休憩に入る直前、川原さんがぽつりと言った。

「店長さん。手を動かしてると、言葉より早く伝わることってありますよ」

蓮は、はっとした。

これまでの3日間、「店長っぽく振る舞おう」としていた。
指示、管理、報告——そんなことばかり考えていた。

でも。

現場で一緒に汗をかく。
それこそが、スタッフの信頼をつくる一番の近道だったのかもしれない。

自分が手を動かすことで、相手の心が少しだけ開く。
店長という肩書きが、はじめて“誰かのそばにいる”ものになった気がした。


🌟 今日の学び:「導く力」は、背中で語ることから始まる

店長だからといって、すぐに信頼されるわけではありません。
指示や言葉よりも、“一緒にやっている姿”が、現場の空気を変えることがあります。

行動で示すリーダーシップこそが、信頼構築の最初の一歩。
川原さんのような“伴走する姿勢”にこそ、導く力の本質があります。


📖 次回予告:「サキの涙」——誰にも気づかれなかった彼女のSOS

ある夜、バックヤードで一人泣いていたサキ。
蓮が初めて「店長としての役割とは何か」に気づく出来事が訪れる。

▶︎ 第4話を読む

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