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人を育てるフレーム「Will・Can・Must」活用術|店長ができる本当のキャリア支援
こんにちは!森友ゆうきです。
皆さんの店舗では、1on1(ワンオンワン面談)を実施していますか?
「最近どう?」で終わるその時間、もっと部下の成長につながる場に変えることができます。
今回ご紹介するのは、育成の現場で効果を発揮するWill・Can・Mustというフレームを使った1on1の進め方です。
この3つのキーワードを使えば、部下のやりたいこと・できること・求められていることを整理し、
店舗にとっても本人にとっても意味のある面談になります。
1. Will・Can・Mustとは?
まずはこの3つの基本を押さえましょう。
要素 | 意味 | 面談での目的 |
---|---|---|
Will | やりたいこと | 内発的動機を引き出す |
Can | できること | 強み・スキルの可視化 |
Must | やるべきこと | 会社や店舗の期待と役割 |
この3つを「すり合わせる」ことで、本人のやりがいと組織の成果をつなぐキャリア設計ができます。
2. 店長の1on1に「Will・Can・Must」を取り入れる意味
1on1は、単なる報告や確認で終わらせず、部下の未来を考える時間に変えることが大切です。
Will・Can・Mustのフレームを使えば、以下のような問いかけが自然にできます。
- 「この人は何をやりたいんだろう?」
- 「今、どんな強みがあるんだろう?」
- 「私はこの人に何を期待しているんだろう?」
それを整理することで、店長自身のマネジメントにも軸が生まれ、部下との信頼関係も深まります。
3. 具体的な進め方|1on1の流れと質問例
以下のステップで1on1を進めると、会話が深まり、記録や次回へのつながりも明確になります。
① アイスブレイク(3分)
- 「最近どう?」
- 「何か楽しいことあった?」
▶ 部下の緊張をほぐし、本音を引き出す準備をします。
② Will:やりたいことを聞く(5〜7分)
- 「仕事で楽しいと感じる瞬間は?」
- 「本当はやってみたい仕事ってある?」
- 「どんな働き方を将来イメージしてる?」
▶ 小さな“やってみたい”でもOK。将来像でなくても構いません。
③ Can:できることを確認する(5分)
- 「これまで褒められた仕事は?」
- 「自分が得意かもと思える作業はある?」
- 「他の人に教えた経験ってある?」
▶ 自覚していない強みを一緒に見つけるのがポイントです。
4. Mustの伝え方と、次の行動にどうつなげるか
WillとCanをじっくり聞いたあとに、「Must=今、期待されていること」を伝えるタイミングがきます。
ここで大事なのは、いきなり“指示”にしないこと。
まずは、相手のWillとCanを受け止めた上で、やわらかくMustを伝えます。
「今、○○さんに期待してることがあって」
「今のチームに必要な力として、○○があると思ってる」
そして、Will・Canとのつながりを添えていきます。
「○○がやってみたい(Will)って言ってたよね。それってちょうど、この役割にピッタリだと思ってるよ」
「○○が得意(Can)なところを活かして、今の店舗でこんなことをやってみてほしい」
Mustを“押しつけ”ではなく“提案”として伝えることで、納得感が生まれやすくなります。
次の行動を“仮決め”する
最後は、次の行動を一緒に“仮決め”することで、1on1が具体的な一歩になります。
- 「じゃあ、次の1ヶ月で○○を目標にしてみようか」
- 「今後、こういう動きが見えてきたら嬉しいな」
ポイントは、行動のハードルを低く設定すること。
「まず1回やってみる」くらいのサイズ感で、部下の自己効力感が高まります。
こうして、1on1は“対話”で終わらず、“育成”として機能するようになります。
5. Will・Can・Mustの「ズレ」から見える育成のヒント
現実の1on1では、3つがうまく揃わないこともよくあります。
でも実は、その“ズレ”こそが育成の出発点になるのです。
🟡 WillとMustが近いが、Canが離れている場合
例:
本人は「リーダーになりたい(Will)」、店舗としても「今の役割を全うしてもらいたい(Must)」。
でも、今のスキル(Can)が追いついていない。
対応策:
「じゃあ、まずは○○の仕事から練習してみよう(勉強しよう)」など、Canを育てる育成プランを提示する。
WillとMustが一致しているから、やる気は高く育成がスムーズに進みやすい。
🔵 WillとCanは近いが、Mustと離れている場合
例:
「データ分析が好き(Will)」で「得意(Can)」だけど、
今の役割(Must)は「接客・チーム運営」重視。
対応策:
Mustの中にWill・Canを活かす仕事を見つける。
「数字分析で売場改善に貢献してもらおう」などの工夫で、本人の納得感を高める。
🔴 MustとCanは近いが、Willが離れている場合
例:
「接客は得意(Can)」で「接客担当として期待されている(Must)」けれど、
「もう興味が持てない(Will)」状態。
対応策:
Willを丁寧に引き出し直し、新しい目標を一緒に見つける。
「接客から“新人指導”へステップアップしよう」といった“再設計”が鍵になる。
6. Willだけが強い場合|夢を現場とつなげる問いかけ
強いWillを持っているが、CanもMustも結びついていない若手もよくいます。
たとえばこんな例です:
「将来、海外で広告の仕事がしたいんです」
そんなとき、まずはWillをしっかり受け止めつつ、その“奥”を問いかけてみます。
「海外で広告の仕事をしたいんだね。
でも本当は、“海外で広告の仕事を通じて活躍したい”んじゃないかな?」「それなら、今の店舗でどんな力を高められるだろう?」
「クレーム対応、接客、顧客管理、金銭管理、部下マネジメント…」
「全部、広告の仕事にもつながっていくと思うよ」
夢を否定せず、“今”に意味を見出させる問いが、1on1の大きな価値になります。
WillをきっかけにCanを伸ばし、Mustを提案する。
この流れを丁寧に設計することで、現場でもキャリア支援が可能になります。
7. まとめ|1on1は“問いかけの力”で、未来をつくる
店長として部下と1on1をするとき、大切なのは「アドバイス」ではなく、“問いかける力”です。
Will・Can・Mustの3つを軸にすれば、部下のやりがい・強み・役割を整理でき、
本人の未来と、今いる場所がつながります。
そしてその問いかけは、相手だけでなく、問いかける店長自身を成長させてくれます。
1on1は、未来を一緒につくるための対話。
ぜひ、あなたの売場でも“問いかけ”から始めてみてください。
森友ゆうき