講師の成長は5段階ある|“伝える人”で終わらないための実践ガイド
【最新記事の目次】
はじめに|講師として、こんな経験はありませんか?
こんにちは、森友です。
研修が終わったあと、「とても勉強になりました!」という声はあった。
でも数ヶ月後、現場では何も変わっていなかった──
そんな経験をしたことがあるなら、あなたはすでに気づいているはずです。
「話し方」や「スライドの工夫」では、本当の変化は起きない。
講師には、成長の段階があります。
本記事ではその5つのレベルを解説し、その先にある“境地”についても触れます。
あなた自身の「講師としての在り方」を深めるヒントに、きっとなるはずです。
第1章|講師レベル5段階|全体像と違い
レベル | タイトル | 主な特徴 | よくある課題 |
---|---|---|---|
Lv.1 | インストラクター | 台本通りに進行できる | 対話ができない、反応が取れない |
Lv.2 | 実務型講師 | 経験を交えて話せる | 構成が弱く再現性がない |
Lv.3 | ファシリ型講師 | 受講者との関係性を築ける | 感覚任せで属人性が強い |
Lv.4 | 設計者型講師 | ゴールから逆算して構成できる | 属人化しやすい |
Lv.5 | 変容型講師 | 相手の行動・在り方を変える | 気持ちよくなって終わる危険 |
紹介する講師の5段階フレームは、どこかの教育学者が提唱した理論ではありません。
私自身が、現場の講師経験を積み重ね、試行錯誤を繰り返しながら独自に編み出した実践モデルです。
何百回もの登壇を経て、「うまく話せた日」「全然伝わらなかった日」「現場が動いた瞬間」──そのひとつひとつから、気づきと検証を重ねてきました。
だからこそ、これは単なる理論ではなく、“現場で役立つ指針”として届けたい。
そう願ってこの5段階を言語化しています。
第2章|各講師レベルの詳細と進化のポイント
Lv.1:インストラクター 〜台本通りに進める人〜
あなたが最初に講師として登壇したとき、「台本通りにうまく話せるか」「時間内に終われるか」で頭がいっぱいだった記憶はありませんか?
このレベルでは、決められたスライドや進行表に従って、正確に話すことが主な役割です。話す内容にミスがないか、詰まらず進行できるかが最大の関心事となります。
一方で、受講者の表情や反応には気づきにくく、リアルタイムで場の空気を読み取って修正する余裕もまだありません。言い換えれば「一方通行の伝達」が中心です。
ですが、このレベルは講師としての“最初の一歩”。大切なのは、「まず伝える経験を積むこと」。完璧に話すことよりも、挑戦する姿勢が次のレベルへの鍵になります。
Lv.2:実務型講師 〜経験を語れる人〜
登壇回数を重ねるうちに、あなたは気づくかもしれません。
「自分の現場経験を交えると、受講者の反応が変わる」
と。これがレベル2です。
現場での失敗談や成功体験、リアルな実例を交えながら話すことで、参加者の「わかる」「自分にもできそう」が生まれます。説得力があり、共感も得られやすく、「この人の話は信頼できる」と感じさせる存在になっていきます。
しかし注意すべき落とし穴もあります。それは「経験談に頼りすぎてしまう」こと。話は面白くても、構成が甘かったり、再現性が低かったりすると、受講者が「結局、何をすればいいのか」が見えなくなってしまいます。
また、自己流の成功体験を“正解”として押しつけてしまうリスクもあります。ここで必要なのは、「語り」と「学び」の間に橋をかける力。あなた自身の体験を他者にも応用できる形で、整理・構造化していくことが、次のレベルへの鍵になります。
Lv.3:ファシリテーション型講師 〜共創する人〜
ある日、あなたの問いかけに、受講者が言葉に詰まりながらも「自分の本音」を語った。
場の空気が静まり返り、その人の気づきに全員が耳を傾けた──そんな経験はありませんか?
これがレベル3、ファシリテーション型講師の世界です。ここでは、講師が一方的に話すのではなく、「問いかけ」と「場づくり」によって、参加者自身が学びを発見していきます。
受講者の言葉が主役になることで、「学びが自分ごとになる」「他者の気づきから学べる」場が生まれます。講師はあくまでその“触媒”であり、共に学びを創り出す存在です。
ただしこのレベルにも課題はあります。それは、「場はよかったけど、学びの目的があいまいだった」という状態に陥りやすいこと。
問いとゴール、空気と論理。その両方を設計できるようになることで、次のレベルが見えてきます。
Lv.4:設計者型講師 〜学びをデザインできる人〜
講師としての経験を積み、ふと「この流れ、もっとこうすればいいのに」と構成全体を俯瞰できるようになってきたら──あなたはレベル4への扉を開いています。
この段階では、単なる話の上手さや場づくりを超えて、「学習ゴールから逆算した設計」ができるようになります。目的に応じてどんな問いを使うか、ワークの順番はどうすべきか、講師の関わり方はどこまでか──すべてを意図的に組み立てられるのがレベル4の特徴です。
また、他講師と連携したプログラム全体の設計、育成体系づくり、複数回の学びを繋ぐシナリオ構成など、より大きな視点でも力を発揮できるようになります。
注意すべきは、設計が「自分にしかできないもの」になってしまうこと。属人性が強すぎると、他者には再現できません。
次のステップに進むには、「誰がやっても成果が出る設計」を意識し、再現性と汎用性を持たせていく必要があります。
Lv.5:変容型講師 〜人の“在り方”を変える人〜
受講者の心の奥に届く問い。空気を変える一言。行動を後押しする沈黙。
このレベルに到達すると、あなたの言葉や問いが受講者の「在り方」にまで深く届くようになります。
知識やスキルを伝えるのではなく、価値観・意識・行動──受講者自身の“人生の選択”に働きかける講師。変容型講師は、まさにその存在です。
受講者のなかには、「この講義で人生が変わった」「あの問いが、ずっと残っている」と語る人も出てくるでしょう。それは誇るべきことです。
講師の最終段階は、レベル5です。
うまく話せたか、感謝されたか、アンケート結果が良かったか──それらは“講師の気持ちよさ”にすぎません。
本当の評価は、受講後に「実際に行動しようと思った人」「一歩踏み出した人」がどれだけいたか。
それだけです。
そしてそれは、事後課題を提出させることではありません。
受講者が自らの内側から「やってみたい」と思い、自然と動き出す。
その“きっかけの場”をつくれる講師が、レベル5なのです。
Lv.5の罠|気持ちよくなって終わる
ただしこのレベルには、最大の罠があります。それは──「講師自身が、変容させた快感に酔ってしまう」こと。
感謝される。影響力を実感する。場が感動で包まれる。──その心地よさに、講師自身が依存してしまうと、「講師の成長」は止まります。
真に価値あるLv.5講師は、「私がいたから変わった」ではなく、「私がいなくても変わる場を創った」と言える人。
この視点を持てたとき、あなたはレベル6──文化を創る講師の入口に立っています。
私の第一のロマン|店長を幸せにすること
私がこのブログを書き続けている理由は、たったひとつ。
「店長を幸せにすること」です。
現場の最前線で働く店長たちが、自分の仕事に誇りを持ち、
スタッフやお客様に喜ばれ、組織の中で認められていく。
その姿を増やしたくて、ずっとこのテーマに取り組んできました。
私の第二のロマン|レベル5講師を社内に乱立させる
そして今、私はこう考えています。
店長が幸せになるには、店長を支える“講師”が必要だ。
だから私は、レベル5講師を社内に“乱立”させたい。
誰かを変えられる講師が、どの現場にも自然にいる。
その文化をつくることも、今の私のロマンです。
レベル6|文化を創る講師へ
レベル5の先には、ひとつの“境地”があります。
それが、レベル6|文化創造者という講師像です。
目の前の受講者を変えるだけでなく、
「講師が育つ文化」「問いが継承される場」「学びが自走する仕組み」そのものを設計できる講師。
それが、レベル6の講師です。
社内にレベル5講師を乱立させるという私の“第二のロマン”は、まさにこのレベル6の実践です。
自分が教えなくても、教える人が育ち続ける土壌をつくる。
それはもう、講師ではなく“文化を創る人”です。
おわりに|“伝える人”で終わらないために
世の中には、話すのがうまい講師がたくさんいます。
でも、「話を聞いたあと、実際に行動が変わった」と言われる講師は、ほんのわずかです。
講師の成長には、段階があります。
どのレベルにも価値があり、どのレベルにも壁があります。
そしてその壁を越えた先に、“伝える”から“変える”講師が生まれるのです。
あなたが今、レベル3にいても、レベル4にいてもいい。
でももしあなたが、「人の行動に火を灯す講師」を目指したいなら、
レベル5は、きっとあなたにとっての“新しいスタート地点”になるはずです。
私自身は、その先にあるレベル6──講師が自然に育つ文化を設計することを目指しています。
それは、あくまで私自身のロマンであり、挑戦です。
あなたは今、どの段階にいますか?
そして、これからどんな講師を目指したいですか?
その問いを、心の中にそっと置いて、このページを閉じていただけたら。
それだけで、私にとってこの記事は意味を持ちます。