ECRS(イクルス)の意味と使い方|店長の業務を劇的に改善する4ステップ
こんにちは!森友ゆうきです。
「業務改善って、具体的に何をすればいいの?」
そんな疑問を持つ店長や店舗マネージャーの方へ。
今回お届けするのは、店舗運営に役立つ「ECRS(イクルス)の法則」を活用した思考整理術です。
この法則は、トヨタや製造業の現場で培われた改善の基本でありながら、
実は、店舗マネジメント・タイムマネジメント・業務設計にも応用できる万能フレームなんです。
【最新記事の目次】
第1章|ECRSの法則とは?
ECRSとは、次の4つの頭文字から成る改善アプローチです。
- E(Eliminate): やめられないか?
- C(Combine): まとめられないか?
- R(Rearrange): 並び替えられないか?
- S(Simplify): 単純にできないか?
この順番で「仕事のムダ」や「複雑さ」を見直すと、
現場の流れが驚くほどシンプルになります。
この記事では、ECRSを
・店長の日常業務にどう活かせるか?
・どんな場面で使うと効果的か?
・できる人はどう自然に使っているか?
を章立てでじっくり解説していきます。
最後にはタイムマネジメントとのつながりまで紹介しますので、
どうぞ現場での改善に役立ててください。
第2章|Eliminate(排除)― 店長が”ほんとうは”やらなくていいこと、増えてませんか?
「店長が一番忙しい店舗」ほど、業務改善が進まない。
それは、店長が“全部抱えているから”です。
でも、ちょっと待ってください。
あなたが今やっているその業務、本当に「店長がやるべきこと」ですか?
Eliminateの第一歩は「手放す勇気」です。
- ・それは自分にしかできない仕事か?
- ・任せたら育成になるのでは?
- ・なくても困らない習慣では?
“やらない”ことを決めると、“やるべき”ことが研ぎ澄まされます。
たとえば、こんな「やらなくてもいい仕事」を抱えていませんか?
- ・本部で用意されたPOPを、自作に置き換えている
- ・パートさんができる作業を、毎回自分がやっている
- ・ルールを決めずに、毎回その場で指示している
自分でなくてもできる仕事は、チームに渡す。
それが、店長の「仕事を減らす勇気」です。
第3章|Combine(結合)― 似た仕事は“まとめて”ラクに
業務の量よりも、“分散”が店長を疲れさせている。
朝の面談 → 昼の書類作成 → 夕方の打ち合わせといったように、
一日中、違う脳みそ・違う相手・違う業務で動いていませんか?
業務を「ブロック単位」で設計してみましょう。
- ・考える仕事は午前中にまとめる
- ・単純作業は夕方に集約する
- ・人とのやり取りは午後イチに
“同じ性質の業務”を“同じ時間帯”にやるだけで、
疲労もストレスも驚くほど減ります。
さらに、業務内容自体も組み合わせられないか考えてみましょう。
- ・面談と報告を一体化する(30分の中でも、1on1を10分+業務進捗報告20分など)
- ・発注と売場確認を同時に行う
- ・週1回のタスクに統一する
Combineは、「時間のかかる業務」を減らすのではなく、
「切り替えのコスト」を減らす設計なのです。
切り替えコストとは?
書類作成を集中している時に、中断して現場確認に行く➡OJT教育する➡事務所に戻り書類作成・・・
この連続が店長業務のリアルです。
ただし、ここに”切り替えコスト”という目に見えにくい非効率とエネルギー消費が隠れています。
業務はなるべく纏めたい。接客が絡む業態の場合は、困難ですが何かと何かは纏めれないか?と考えることが大事です。
第4章|Rearrange(並べ替え)― 「前倒し設計」が店長の余裕をつくる
「気づいたらギリギリ」「締切日に焦る」——
それは、仕事が遅いのではなく、順番設計ができていないから。
現場でありがちな“順番ミス”はこうです:
- ・棚替え当日にPOPが間に合わない
- ・納品物が来てからレイアウトを考え始める
- ・面談の準備ができず、その場しのぎになる
■ ゴールから“逆算”せよ
棚替えなら、「棚替え当日から1週間前まで」を遡って、
誰が・いつ・何をするかを整理する必要があります。
■ WBS(作業分解構造)をつくろう
WBSとは、作業を細かく分解し、工程と順番を整理する手法です。
これを使うと「全体が見え」「抜け・漏れ」を防げます。
例:新商品の棚替えプロジェクト
工程 | 作業内容 | 期限 | 担当 |
---|---|---|---|
①準備 | 新商品の資料確認 | 7日前 | 副店長 |
②設計 | 売場レイアウト案作成 | 6日前 | 売場リーダー |
③資材 | POP発注・確認 | 5日前 | 店長 |
④共有 | 全体説明・朝礼で共有 | 3日前 | 店長 |
⑤実行 | 棚替え作業 | 当日 | 全員 |
■ 明日の余裕は「今日の15分」でつくれる
Rearrangeは、ただの並び替えではなく、“段取りを見える化する力”です。
ToDoリストを越えて、WBSを使った逆算スケジュールを設計すれば、
あなたの時間は、きっともっと味方になるはずです。
第5章|Simplify(単純化)― やりすぎていませんか?
仕事が終わらないのは、やることが多いからではない。
「やり方が複雑だから」かもしれません。
Simplifyは、やる内容を変えずに、やり方だけを簡単にするという発想。
- ・毎回一から作っていた掲示物→テンプレート化する(本部指示に任せる)
- ・説明に時間がかかるマニュアル→図解を入れる(そもそもマニュアルいらずが楽)
- ・朝礼のネタ探し→日報から拾う習慣をつける(部下に委託)
複雑さは、熱意の裏返しでもあります。
でも、それを「伝わる」「続けやすい」「仕組み化」へ変えるのがSimplifyの力です。
一からやり直しを防ぐ「30・50・80の法則」
Simplifyの視点でぜひ知っておきたいのが「30・50・80の法則」です。
これは、“どこまで仕上がっていたら仕事を任せるか?”の判断基準。
- 30点の出来でもまず、上司に一度見てもらう:方向性があっているか確認
- 50点の段階で再度進捗を報告する:方向性が本当にズレてないか確認する
- 80点の段階で報告する:最終仕上げ前イメージを伝える(印刷は両面か?A3・A4? カラー?モノクロ?、誰向けの資料にするか最終確認)
「100点じゃないと渡せない」という考えは、方向性が違った場合に一から練り直しというリスクを大きく含みます。
よって、リーダーとしての自分を疲れさせる原因になることがよくあります。
第6章|できる人は「自然にECRS」を使っている
「この人、段取り上手だな」
「ムダなく動けるな」
そう感じる人は、意識していなくてもECRSを“自然に”使っています。
■ Eliminate(排除)できる人は「やらないこと」を決めている
・会議が終わるとすぐ「これ、必要ある?」とムダを探せる
・「前やってたけど、今はやめたんだよね」と言える決断力がある
・“ずっと続いてるから”という理由だけで続けることに違和感を持てる
■ Combine(結合)できる人は「流れ」で仕事をまとめる
・「せっかくだから今これも一緒にやっちゃおう」と自然にまとめる
・話しながら複数の目的を果たす、時間も空間も効率的に使える
■ Rearrange(並び替え)できる人は“逆算思考”が習慣
・「この日にゴールがあるから、逆算すると今日ここまでだね」と言える
・資料作成やPOP準備など、締切を自然に先読みできる
■ Simplify(単純化)できる人は「仕組み化」に敏感
・説明が簡潔で、伝え方にムダがない
・フォーマット・テンプレート・ショートカットをうまく活用する
つまり、「できる人」は、ECRSを技術ではなく“習慣”として持っているのです。
では、これらをどう日々のスケジュールや時間管理に落とし込んでいくのか?
次章では、ECRSとタイムマネジメントの関係について深掘りしていきます。
第7章|ECRSは「時間管理」の武器になる
ECRS(Eliminate・Combine・Rearrange・Simplify)は、頭の中だけで考えていると使いこなせません。
それを実際の仕事に落とし込むツールこそが、「予定表(Outlookなど)」です。
■ Outlook予定表を“ECRS視点で見る”
単に予定を「入れる」「埋める」だけでなく、ECRSの視点で見直すことが、業務改善の第一歩です。
ECRS | 現場の課題 | Outlookでの改善 |
---|---|---|
Eliminate(排除) | 会議・作業が多すぎて時間が足りない | 予定に「目的」を書いて、必要ない予定を削除 |
Combine(結合) | 同じような業務がバラバラに存在 | まとめて1枠にし、移動や切り替えのムダを削減 |
Rearrange(並び替え) | 締切直前に焦る、後手に回る | 逆算して予定を組み直すことで、前倒しの動きが可能 |
Simplify(単純化) | 業務が複雑化し、指示が伝わらない | 内容を簡素化し、予定名やメモを明確にする |
■ Outlook予定表は「ECRSを実行に移す装置」
予定表を「見える化のキャンバス」として使うことで、
ECRSをただの“思考法”から“実行法”へと昇華できます。
そしてこれは、リーダー自身の時間を守るだけでなく、部下の動きも変えるきっかけになります。
特に1on1面談は、Outlook予定表に入れて部下に面談がいつあるか伝えましょう。
部下も予定がわかれば、そのタイミングまで相談事を待つ余裕が生まれ、急に書類を準備する無駄も排除できます。
おわりに|ECRSは、現場を動かす“再現性のある思考法”
ムダを削り、流れを整え、順番を工夫し、単純にする。
この4つの視点を日常の中で当たり前に使える現場は、確実に強くなります。
物事を見たときに、4つのどれが使えるかパッと想像できること。
- E(Eliminate): やめられないか?
- C(Combine): まとめられないか?
- R(Rearrange): 並び替えられないか?
- S(Simplify): 単純にできないか?
この順番で「仕事のムダ」や「複雑さ」を見直すと、
現場の流れが驚くほどシンプルになります。
店長の業務を劇的に改善する4ステップを元に、明日から楽に業務管理してみませんか?
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