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【連載小説・店長物語#08】サキの挑戦|ひとりの声が、現場を変える【フィクション連載】
※本記事は、小説形式で描くフィクションコンテンツです。
実在の人物・店舗をモデルにしたものではありませんが、店舗運営の本質に通じる物語を描いています。
こんにちは!森友ゆうきです。
「アイデアを出すのは、店長じゃなくてもいい」
第8話では、大学生アルバイト・サキの小さな提案が、店に“風”を起こし始めます。
第八話:サキの挑戦——ひとりの声が、現場を変える
「店長、ちょっと、相談いいですか」
バックヤードで棚整理をしていた蓮に、サキが声をかけてきた。
「最近、お客様から“POPが見づらい”って言われることが多くて……
自分なりにPOP、ちょっと工夫してみてもいいですか?」
蓮は一瞬、驚いた。
サキが“改善案”を自ら口にするのは、これが初めてだった。
「もちろん。むしろ、ぜひお願いしたい」
そう答えながら、蓮は静かにうれしさがこみ上げるのを感じていた。
数日後。
サキが作ったPOPは、手書きでイラスト付き。
色も工夫されていて、サイズも読みやすく調整されていた。
「……すごいな、これ」
同じ時間帯に働いていた佐伯も、思わず声をもらした。
「こういうのって、売場の空気が変わりますね」
蓮はうなずきながら、心の中でつぶやいた。
——小さな挑戦が、こうして店を動かすんだ。
「私、POPとか、ほんとは苦手だったんです。
でも、お客様にもっと伝わったらいいなって思って……」
休憩中、サキがぽつりと話してくれた。
「今まで“どうせ私なんか”って思ってたけど、
店長が話聞いてくれて、“やってみてもいいんだ”って思えたんです」
蓮は、笑いながら言った。
「むしろ、俺よりセンスあるよ。ありがとう」
その言葉に、サキはほんの少しだけ、誇らしげに笑った。
🌟 今日の学び:「心の力」は、“誰かの挑戦を応援する力”
現場を変えるのは、店長の言葉だけではありません。
一人のスタッフの気づき・提案・行動が、空気を変えるきっかけになります。
その“挑戦”に火をつけられるのが、店長の「聴くこと」と「任せる勇気」です。
店長がすべてを決めるのではなく、
“スタッフの力を引き出す”時代へ。
現場の変化は、ひとりの声から始まります。
📖 次回予告:「お客様のクレーム」——蓮が“守りたい”と思った瞬間
ある日、サキがPOPをきっかけにお客様からクレームを受ける。
その時、店長・蓮は初めて“誰かの前に立つ覚悟”を試される——。