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【連載小説・店長物語#10】売場が変わった|“誇れる現場”はこうして生まれる【フィクション連載】
※本記事は、小説形式で描くフィクションコンテンツです。
実在の人物・店舗をモデルにしたものではありませんが、店舗マネジメントの本質に通じる物語を描いています。
こんにちは!森友ゆうきです。
「この売場、うちのスタッフがつくってるんです」
そんなふうに誇りをもって働けたら、現場はきっと変わっていく。
第10話では、チームの中に芽生え始めた“誇り”の物語です。
第十話:売場が変わった——“誇れる現場”はこうして生まれる
ある朝、POP売場の前に立っていた男性客が、近くのスタッフにこう声をかけた。
「このPOP、わかりやすいね。誰が描いたの?」
レジ打ちをしていたサキが、その会話を耳にして顔を上げた。
男性スタッフが少し照れながら答える。
「うちの学生アルバイトが作ったんですよ。あの子、けっこう頑張ってて」
蓮はそのやりとりを通路の奥から見ていた。
サキの手が、レジの下でそっと握られているのが見えた。
「今日のPOP、めっちゃ売れてますよ」
売場担当の佐伯が、報告にきた。
「新商品のジャム、昨日より売上2倍です」
「すごいな。配置も変えてくれたんだね」
「はい。サキさんが“この棚の高さだと見えにくいかも”って言ってて」
蓮は静かに頷いた。
——もう“自分の店”になってきてるんだ。
その日の終礼。
「今日、POPのことでお客様に褒められました」
蓮がそう報告すると、スタッフたちがざわついた。
「サキさん、やりましたね!」
「イラスト可愛かったですもん」
サキは、はにかみながらも、まっすぐ顔を上げた。
「……ありがとうございます」
その声には、前よりも少しだけ、自信が宿っていた。
蓮は、その瞬間を見逃さなかった。
(あの子、ちゃんと“居場所”を見つけ始めてる)
周りのスタッフも自然と笑顔を見せ、
終礼の空気がふわっとあたたかくなった。
それは、誰かが誰かを認めた証。
売場はまだ完璧じゃない。でも、この店には今、たしかに“前に進む空気”があった。
「明日もよろしくお願いします」
サキの声に、数人のスタッフが「おつかれさま!」と声を返す。
蓮はその光景を見ながら、心の中でそっとつぶやいた。
(いいチームになってきたな)
🌟 今日の学び:「心の力」は、“スタッフが誇れる場”をつくること
売場が変わるのは、ツールや配置だけではありません。
「この現場に、自分が関われている」という実感が、スタッフの誇りを育てます。
店長は、完成形を提示するのではなく、
“関われる余白”を設計し、挑戦できる場をつくることが役割です。
誇りは、自信を生み。自信は、挑戦を生み。
そして挑戦は、現場を進化させていきます。
📖 次回予告:「川原さんの覚悟」——ベテランスタッフの引き際と、店長の決断
ある日、川原さんが「退職」を口にする。
店長・蓮はその言葉の裏にある“ある覚悟”と向き合うことになる——。