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【店長物語#02】崩壊|辞めていく仲間たちと止まらないクレーム
※本記事は、小説形式で描くフィクションコンテンツです。
現実の店舗運営に通じる“リアルな感情”を描いています。
こんにちは!森友ゆうきです。
信頼ゼロの状態から、店を立て直すのは簡単なことではありません。
主人公・新海 蓮の第2話は、まさに「どん底の始まり」。
崩れたシフト、辞めていく仲間、止まらないクレーム……。
でも、それでも人は立ち上がれる。
そう信じて、物語は続きます。
第二話:崩壊——辞めていく仲間たちと止まらないクレーム
配属から3日目の朝。
蓮は勤務表を見て、凍りついた。
——3人、欠勤?
出勤予定のアルバイト3名が、すべて「連絡なし欠勤」。
慌てて連絡を取ろうとするが、電話に出ない。
1時間後、本部からメールが届く。
件名は「当日欠勤の場合の対応方針」。
※経費削減のため、当面の間、当日欠勤が発生した場合の店舗間ヘルプは行わないものとする。
例外対応は認められません。
——この状況で、ヘルプ依頼もできない?
売場は開店早々に崩れた。
商品棚が乱れ、陳列ミスによる返品が続出。
レジは1名体制で、列は10人以上に。
そして、クレーム。
「店長を呼んでください!」
「こんなに並ばせるなんて、おかしいでしょ!」
初めての“直接対応”。
蓮の声は震えていた。
「大変申し訳ありません。すぐに改善いたします…」
だが、相手の表情は変わらない。
「改善」なんて言葉、何度も聞いた。そんな目をしていた。
その日の帰り、また1人のスタッフから退職届が届く。
手書きの短い文面には、こう書かれていた。
「もう無理です。ここに未来は見えません」
蓮は、何も言い返せなかった。
夜、アパートの玄関を開けた瞬間、力が抜けた。
靴を脱いだまま、カーペットに倒れ込む。
——店長って、こんなに苦しいんだろうか。
夕食はコンビニの冷たいパスタ。
温める気力もない。
「なんで、俺がこんな目に…」
天井を見上げると、電気の明かりが妙にまぶしかった。
翌朝、出勤準備をしていると、川原さんがぽつりと話しかけてきた。
「店長さん。ひとつだけ言ってもいいですか?」
「……はい」
「若い子ってね、“ちゃんと見てくれる人”がいたら、変わるんですよ」
蓮は思わず聞き返した。
「“ちゃんと見てくれる”って……?」
「名前を覚えてくれる、ありがとうを言ってくれる、何より、困ってるときに気づいてくれる。
店長さんがそういう人なら、この店、きっと変わりますよ」
それは、昨日のクレーム対応で失った何かを、思い出させる言葉だった。
——ちゃんと見よう。
その一歩すら、まだ自分は踏み出していなかった。
🌟 今日の学び:「育てる力」は、まず“見つける力”から
スタッフの離職が続くと、「人がいない」「仕方ない」で終わらせたくなります。
でも本質は、「誰も気づいてくれなかった」から、やめてしまうのかもしれません。
人を育てるには、まず「気づく力」=観察と承認が必要。
川原さんの言葉に、現場の真理が隠れていました。
📖 次回予告:「川原さんの一言」——心を動かす人は、偉い人ではなかった
最も孤独だった日の終わりに、たった一人の“仲間”が現れる。
それが蓮にとっての、小さな希望の光になる。